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広報つるおか12月号

更新日:2019年4月17日

市長の一筆入魂(11)

 「明治は遠くなりにけり」。早朝の窓から見る間に広がる噴煙に、その句が脳裏をよぎった。10月24日から26日、私は「庄内の翼」代表訪問団の団長として兄弟都市・鹿児島市を訪問していた。訪問初日は静かだった桜島。朝日が差すカーテンを開けると目に飛び込んできた鹿児島を代表する躍動的な風景に、あのお方も見た風景なのだろうとの感慨が胸に迫ってきた。「降る雪や」。思わず調べた初句(最初の五文字)は、桜島の風景とは対照的なものであったが、中村草田男がこの句を詠んだのは、明治からまだ20年ほどしかたっていない昭和初期。まして明治から150年の本年、「遠くなってしまった」、と思うのが一般的な日本人ではないだろうか。
 私たち庄内に生きる者にとっては少し違うのではないか、と私は思っている。7月下旬に鹿児島市を訪問する鶴岡の中学生親善使節団を見送る際、私は、「西郷南洲翁の教えは皆さんの心の中にもあるはずだ」という旨の挨拶をした。4年前、故郷・鶴岡にUターンし、家の整理をしていたとき、私は南洲翁の肖像画を見つけた。曾祖父の世代に読まれた書籍の中には、その遺訓集も含まれていた。確かに明治から、戊辰の役から、随分と時はたってしまったが、人としての立ち居振る舞い、物の考え方が、書籍うんぬんを超えて、庄内に住む私たちの暮らしのどこかに残り、受け継がれているように思われてならない、ということを中学生に伝えたかった。
 南から北へ。鹿児島訪問後は北海道に移動し、JAの皆さんと共に札幌市中央卸売市場などで庄内柿のトップセールスを行った。庄内には、養蚕、孟宗、お茶など「北限の」と冠されるものがいくつかあるが、柿もその一つ。その柿の栽培・普及にも旧庄内藩士が深く関わっていることは広く知られている。北限の産地からの庄内柿が、首都圏ではなく開拓で縁の深い北海道でその7割以上が販売されているのも歴史を知れば得心が行く。私たちの産業・経済も諸先輩の営みの土台の上に成り立っているのだ。
 11月4日、先ごろ斎藤茂吉文化賞を受賞された阿部月山子先生の句碑の除幕式に参列した。「濃竜胆雲が雲押す月の山」。庄内には鹿児島にもない、北海道にもない、美しい風景がある。
平成の御代・最後の師走。狭量な人間の世界にこだわるのではなく、広大無辺の天を相手にする、俳句の世界も政治の世界も案外つながっているのかもしれないなどと考えつつ、歳が暮れていく。一足早いのですが、良いお年を。

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